
ストラテ爺〜!
経営計画ってなんだかお堅い言葉で眠くなりそうニャ…。
中小企業診断士の勉強でも出てくるけど、なんだかイメージがわかなくて。



ふむふむ、それは良い質問じゃ。実は経営計画は、企業が未来を切り開くための地図のようなものじゃ。目的地を決めずに旅に出るものはいないじゃろう?



なるほどニャ。じゃあ会社にとっての目的地を決めるのが経営計画…。



その通りじゃ。そしてその地図は、社長一人の頭の中だけでなく、社員のみんなで共有できるように作るのが理想じゃ。



うぅ。なんだかやっぱり難しそう…。
でも、ストラテ爺がやさしく教えてくれるなら、頑張れる気がするニャ!



よろしい。では今回は、経営計画とは何か?
基礎からわかりやすく、試験にも役立てるように解説していこう!


経営計画とは?
経営計画:企業ないし、組織体が将来に達成すべき目標とその目標に到達するためにとるべき行動を事前に決定すること。



経営計画は、いくつかの分類方法があるが、戦略計画、中長期計画、短期計画の分類は理解しておくように!
将来に目指すべき方向を決定する。
ex)戦略ビジョン、事業構成、競争戦略
戦略計画を実行するためのより具体的な数量的計画。3〜5年間の計画。
中長期計画の初年度の計画をさらに詳細化した計画。



大まかな方向性から実行レベルにまで細かくしていくイメージじゃ。
上にはないが、長期計画は、5〜10年、10年以上の計画のことじゃ。



なるほど。
ちなみに戦略ビジョンって何ニャ?
戦略ビジョン:異質な事業分野に成長しようとする企業が前もって持っている戦略的事業マップ。①新規事業と②既存事業と③それらの間で生じうる相乗効果(シナジー)について書かれた概念図。





戦略ビジョンを下位のアクションプランと連動させると、戦略行動が柔軟になる点も抑えておくのじゃ。



どういうことニャ?



連動させるということは、戦略ビジョンの変更に合わせてやるべきこと(戦略行動)を適合させるということ。連動していないと戦略ビジョンが変わったのに、以前の行動を続けることになり柔軟性はなくなるじゃろ〜。



なるほど。上位の計画に下位の計画を連動させることが大事ってことニャ!
経営計画の機能(メリット)



経営計画の機能はざっと3つある。
- ①事前準備による環境適応
-
将来の内外環境を予測し、それに対応する行動案を決定しておくことで、環境変化に迅速に対応できる。
- ②事前調整
-
経営計画を作る中で、関係性のある部門や従業員のとるべき行動が時間的、空間的に事前に調整される。これにより、仕事の進捗状況を部門間、従業員間で調整する必要性を減らすことができる。
- ③コントロール
-
計画を通じて部下の行動をコントロールできる。戦略計画は、従業員の方向性や動機づけに役立ち、短期計画は従業員の業績評価基準にもなる



事前準備による環境適応を重視したのが、
「コンティンジェンシープラン」と「事業継続計画(BCP)」じゃ。
コンティンジェンシープラン:正規の計画の他に、その前提が変わった場合にすぐに切り替えて使うためにあらかじめ立てておく複数の計画。
事業継続計画(Business Continuity Plan):自然災害等、緊急事態による事業資産の損害を最小限にとどめ、中核事業の継続、早期復旧を可能にするために、あらかじめ行うべき活動や事業継続のための手法を決めておく計画。



事後的な計画の修正はなんというニャ?



いい質問じゃ。上記の事前準備と比較して、計画のずれをその都度修正する方法を「ローリングプラン」と呼ぶぞ。
経営計画の逆機能(デメリット)
- ①計画の目的化
-
計画を立てることが自己目的化することで、計画と現実に大きなギャップが生まれる。
- ②計画による柔軟性の低下
-
とるべき行動を事前に細かく決めることで、環境変化に対する迅速な対応を妨げることがある。



計画はあくまで理想に近づくツール。
不確実性が高い場合には、余白を作ることも大事。
経営計画立案



経営計画は誰が作るにゃ?



基本的には、経営者や本社の企画部門など上位階層が行う。現場の声が計画に反映されにくく、様々な問題も生じるのじゃ。
- ①機会や脅威の発見が遅れる
-
事業周辺の機会や脅威を実感するのは現場であることが多く、現場の声が反映されない場合、機会や脅威を見逃すことにつながる。
- ②学習が計画に反映されない。
-
現場は日々の活動で機会や脅威と対面しながら、学習をしている。これら学習を計画に反映できないことで環境変化に対応した計画を作成することが難しくなる。





①市場と日々関わる実行部門は機会や脅威の認識、それに対する学習をするが、②計画部門にそれらが伝わらない、③伝わっても計画に反映されないことで、計画の精度が下がることを示しておるぞ。



それじゃあ、計画を作る部門と実行する部門が一緒に計画を作っていくのがいいニャ?



まさにその通り!計画が現場に納得してもらいやすくなり、一石二鳥じゃ。



にゃるほど!
でもゼロから計画を作成するの難しそう…。



そうじゃな。そういった経営者のために計画立案ツールが開発されておる。今日は「バランス・スコアカード」を簡単に紹介しておこう。
バランス・スコアカード:経営戦略を達成するために、財務、顧客、業務プロセス、学習と成長の4つの視点で目標を設定し、目標達成度合いによって業績評価を行う手法。



各視点で、CSF、KGI、KPIを定めることで目標達成までの因果連鎖を把握することもできるんじゃ。
- CSF(Critical Success Factor:重要成功要因)
-
目標のために最も重要となる活動や課題。
例)財務→売上向上、顧客→満足度向上、業務プロセス→業務の効率化、学習と成長→スキルアップ
- KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)
-
最終的な目標を定量的に示すもの。
例)財務→売上高1億、顧客→受注件数1000件、業務プロセス→月100時間工数削減、学習と成長→年40時間研修実施
- KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)
-
KGIを達成するための中間的な指標。
例)売上高1億を達成するために、ECサイトの訪問数(パフォーマンスドライバー)を20%あげる。
過去問



1次試験の優先順位は低い論点じゃ。自己責任で捨てても良いぞ〜
H25-1 経営計画の策定と実行について留意すべき点に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 経営計画策定時に用いられる業績に関する定量的なデータを収集して分析することによって、新機軸の戦略を構築することができる。
イ 経営計画になかった機会や脅威から生まれてくる新規な戦略要素を取り入れていくには、計画遂行プロセスで学習が起こることが重要になる。
ウ 経営計画に盛り込まれた戦略ビジョンは、予算計画や下位レベルのアクション・プランと連動させるとコントロール指針として機能するようになり、戦略行動の柔軟性を失わせる。
エ 経営計画の策定に際して、将来の様々な場合を想定した複数のシナリオを描いて分析することによって、起こりそうな未来を確定することができる。
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解答 イ
ア 経営計画策定時に用いられる業績に関する定量的なデータを収集して分析することによって、新機軸の戦略を構築することができる。
不適切。
基本的に外部環境、内部環境を分析した上で戦略を構築する。業績に関する定量的なデータの収集、分析で新機軸の戦略を構築することはできない。
イ 経営計画になかった機会や脅威から生まれてくる新規な戦略要素を取り入れていくには、計画遂行プロセスで学習が起こることが重要になる。
適切。
ウ 経営計画に盛り込まれた戦略ビジョンは、予算計画や下位レベルのアクション・プランと連動させるとコントロール指針として機能するようになり、戦略行動の柔軟性を失わせる。
不適切。
戦略ビジョンと予算計画や下位レベルのアクションプランと連動させると戦略行動の柔軟性を高める。
エ 経営計画の策定に際して、将来の様々な場合を想定した複数のシナリオを描いて分析することによって、起こりそうな未来を確定することができる。
不適切。
起こりそうな未来を確定することはない。
オ 経営計画の進行を本社の計画部門と事業部門が双方向的にコントロールすることは、事業の機会や脅威の発見には無効であるが、部門間の齟齬を把握するには有効である。
不適切。
経営計画の進行を本社の計画部門と事業部門が双方向的にコントロールすることは、事業の機会や脅威の発見には有効である。
H29-12改題 自然災害や大事故などの突発的な不測の事態の発生に対応することは、企業にとって戦略的な経営課題であり、停滞のない企業活動の継続は企業の社会的責任の一環をなしている。そのような事態への対応に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ウ コンティンジェンシー・プランでは、不測の事態や最悪の事態を想定して、その事態が与える業務間の影響を測るべく、事業インパクト分析を重視して危機対応の計画を策定するのが一般的な方法である。
エ 事業継続計画(BCP)では、事業停止の影響度を評価分析して、業務の中断が許される許容期限を把握して業務の復旧優先順位を導くために事業インパクト分析の実施が行われる。
オ 事業継続計画(BCP)は、災害時のロジスティクスの確保を重視した企業間ネットワークの構築を目指すものとして策定されている。
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解答 エ
ウ コンティンジェンシー・プランでは、不測の事態や最悪の事態を想定して、その事態が与える業務間の影響を測るべく、事業インパクト分析を重視して危機対応の計画を策定するのが一般的な方法である。
不適切。
コンティンジェンシープランは、危機対応を計画するのではなく、あらかじめ作った複数の対応計画に切り替える。既存の計画を継続するための対応計画の策定ではなく、計画ごと変更する。
コンティンジェンシープラン:正規の計画の他に、その前提が変わった場合にすぐに切り替えて使うためにあらかじめ立てておく複数の計画。
エ 事業継続計画(BCP)では、事業停止の影響度を評価分析して、業務の中断が許される許容期限を把握して業務の復旧優先順位を導くために事業インパクト分析の実施が行われる。
適切。
オ 事業継続計画(BCP)は、災害時のロジスティクスの確保を重視した企業間ネットワークの構築を目指すものとして策定されている。
不適切。
事業継続計画は、企業間ネットワークの構築を目指すものではなく、その名の通り事業継続のための計画である。
事業継続計画(Business Continuity Plan):自然災害等、緊急事態による事業資産の損害を最小限にとどめ、中核事業の継続、早期復旧を可能にするために、あらかじめ行うべき活動や事業継続のための手法を決めておく計画。
H19-1
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。 企業は規模を拡大するにつれ、生産の効率化や事業領域の調整、資金繰りや設備投資などあらゆる事業活動を計画的に進めることが重要になる。長期経営計画はそのための代表的なものである。しかし、長期経営計画にはいくつか重要な問題点が指摘されている。そのため、それを克服すべく戦略的経営計画が広く用いられている。さらに、近年ではバランス・スコアカードを導入する企業も増えつつある。
(設問1) 文中の下線部の長期経営計画の問題点に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 過去の実績の趨勢や積み上げによる計画部分が多いと、環境の変化から遊離した計画になりやすく、現状維持的な業務遂行に甘んじがちになる。
イ 計画と統制のサイクルが緊密に連動して、管理サイクルが短くなると、現場で創意工夫する余裕がなくなり、ルーティンな仕事ぶりが目に付くようになる。
ウ 計画の策定は通常半年以上かかるので、新年度に入ると早くも次期の計画の策定に取り掛かることになり、計画のローリングは不可能であるばかりか、計画そのものが絵にかいた餅として見捨てられがちになる。
エ 本社の企画部門が中心になって策定した計画は、生産や営業の現場の声が反映されにくいことから、現場の挑戦意欲をそぎ、現場では受容されにくい傾向がある。
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解答 ウ
ア 過去の実績の趨勢や積み上げによる計画部分が多いと、環境の変化から遊離した計画になりやすく、現状維持的な業務遂行に甘んじがちになる。
適切
環境変化を加味した計画の見直しが重要。
イ 計画と統制のサイクルが緊密に連動して、管理サイクルが短くなると、現場で創意工夫する余裕がなくなり、ルーティンな仕事ぶりが目に付くようになる。
適切
ウ 計画の策定は通常半年以上かかるので、新年度に入ると早くも次期の計画の策定に取り掛かることになり、計画のローリングは不可能であるばかりか、計画そのものが絵にかいた餅として見捨てられがちになる。
不適切
長期経営計画は5年〜10年、10年以上の計画である。そのため、新年度に入ると時期の計画の策定に取り掛かることにならない。
エ 本社の企画部門が中心になって策定した計画は、生産や営業の現場の声が反映されにくいことから、現場の挑戦意欲をそぎ、現場では受容されにくい傾向がある。
適切。
(設問2) 文中の下線部のバランス・スコアカードに関する記述として最も適切なものはどれか。
ア バランス・スコアカードでは、業績の原動力となるものをパフォーマンス・ ドライバーとよび、これを特定して直接に管理することによって事前段階からの業績管理を可能にしようとする。
イ バランス・スコアカードには、経営のバランスを図るべく、ビジネス戦略の視点、財務の視点、顧客の視点、業務の視点、学習・成長の視点の5つの視点が設定されている。
ウ バランス・スコアカードは、業績評価システムの構築を目指すものであり、 成果主義的な管理制度には不可欠な管理ツールである。
エ バランス・スコアカードは、多様な目標を総花的に並べることになるだけに、目標間の横の関係性や因果連鎖を的確に把握することは実際には不可能であり、管理技法としての限界が指摘されている。
オ バランス・スコアカードは、日本的な目標管理制度を具体化する計画技法として 1990年代初頭に開発された。
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解答 ア
ア バランス・スコアカードでは、業績の原動力となるものをパフォーマンス・ ドライバーとよび、これを特定して直接に管理することによって事前段階からの業績管理を可能にしようとする。
適切。
イ バランス・スコアカードには、経営のバランスを図るべく、ビジネス戦略の視点、財務の視点、顧客の視点、業務の視点、学習・成長の視点の5つの視点が設定されている。
不適切。
財務、顧客、業務プロセス、学習と成長の4つの視点で設定される。
ウ バランス・スコアカードは、業績評価システムの構築を目指すものであり、 成果主義的な管理制度には不可欠な管理ツールである。
不適切。
バランス・スコアカードは、成果だけでなく、業務プロセスの改善や学習と成長といった要因も重視するため、成果主義的な管理制度に不可欠な管理ツールとは言えない。
エ バランス・スコアカードは、多様な目標を総花的に並べることになるだけに、目標間の横の関係性や因果連鎖を的確に把握することは実際には不可能であり、管理技法としての限界が指摘されている。
不適切。
バランス・スコアカードは因果連鎖を明確にできる特徴がある。
オ バランス・スコアカードは、日本的な目標管理制度を具体化する計画技法として 1990年代初頭に開発された。
不適切。
アメリカのハーバード大学のロバート・カプランとデビッド・ノートンによって1990年代初頭に作られた。
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